2011年1月31日月曜日

ガイアレクイエムもしくはラプソディ (後編)

画像出典: http://choipic.livedoor.biz/archives/2308121.html

(前編のまとめ)

地球を一つの生命体として考える、ガイア理論。
ガイア理論においては、人間もネズミもクジラもお魚も虫けらも植物も全部、
ガイアという生命体を支える体組織、細胞なのだ。

その細胞たちが絶妙なバランスでもって、ガイアを健康な状態に保っていたはずだった。

ニンゲンが、産業革命を皮切りに、化石燃料を使いまくり、急激に増えだした。
ガイアの一部であるはずのニンゲンが、ガイアの他の一部を急激に喰らい出した。

「このままではガイアは死ぬ」 「ニンゲンはガイアの癌細胞だ」

とまで言われるようになった。



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癌、についてもう一度確認しておこう。

ウィキペディアより

『身体を構成している数十兆の細胞は、分裂増殖と、「プログラムされた細胞死」(アポトーシス)を繰り返している。正常な状態では、細胞の成長と分裂は、身体が新しい細胞を必要とするときのみ引き起こされるよう制御されている。すなわち細胞が老化・欠損して死滅する時に新しい細胞が生じて置き換わる。ところが特定の遺伝子(p53など、通常複数の遺伝子)に突然変異が生じると、このプロセスの秩序を乱してしまうようになる。すなわち、身体が必要としていない場合でも細胞分裂を起こして増殖し、逆に死滅すべき細胞が死滅しなくなる。』


つまり癌細胞においては、細胞分裂の寿命・分裂の限度数を決める遺伝子(「テロメア」という)がなくならなくなってしまって、
際限無く増殖しちゃう、ということ。

テロメア、という遺伝子がなくならなくなっちゃうと、周りの組織に害が与えるくらいまで、勝手に増殖してしまう。

これで、しかもその細胞が浸潤したり、転移したりしだすと、いよいよ

「あーこりゃ悪性ですよ、奥さん。悪性腫瘍。まー癌だよ。あら、いやいやここで泣かれても困っちゃうなぁ。残念だけど、ね。」

となる。

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周りの組織が害を受けるくらい、際限なく増殖し続ける。

自分の生活圏では飽き足らず、他の領域を侵し続ける。

これはもう、ニンゲンはガイアの癌だ。

もう、そうとしか考えられん。

ガイアの健康のために、ニンゲンは駆逐されるべきだ!







・・・しかし、待てよ?

テロメアーゼ活性が異常に高いのって、癌細胞だけだっけ?

寿命がほぼ無限なのって、癌細胞だけだっけ?



実は

動物の体の中で。

無限増殖が許され、

エネルギーの大量消費が許された細胞が、

癌細胞以外に、ひとつだけある。









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『不老不死への科学』
より抜粋です。

(このページ、分かりにくいけど、知らないひとにとっては面白い)


まずは、癌についての記述。↓

3.2.2 癌とテロメラーゼ

 癌は活性酸素などによる変異が原因である。その変異は正常細胞の増殖に必要な癌遺伝子に起こり、異常増殖を促進する。また一方で癌抑制遺伝子が変異によって不活性化を起こすと、細胞にアポトーシスが誘導されなくなる。その結果、体細胞が急速に増殖する。これが癌である。こうしてできた小さな癌はテロメアが短縮するまでは成長するが、やがてテロメアが極端に短くなり、テロメアを失った染色体が互いに結合したり、異常な切断を起こしたりする。大部分の初期癌細胞は、このような染色体の異常や複製による遺伝子末端の消失で死滅する。しかし、ここで偶然にテロメラーゼが発現し、無限分裂寿命を獲得した癌細胞だけは成長し臨床的な癌にまで発達する。このように癌とテロメラーゼの発現には深い関係がある。そのため、医療の現場では癌の診断にテロメラーゼ活性の測定が行われることもある。


、、、むむ、目がくらくらするぞ。。。

まあ太字が大事だ。

そして、もっとだいじなのが、次のコピペだ。

ちなみに、以下のコピペは、前述のコピペのひとつ前の項目なのだ。


3.2.1 テロメラーゼによるテロメア延長

ヒトの通常の体細胞は分裂回数に限りがある有限分裂寿命細胞である。しかし生殖細胞は分裂を繰り返してもテロメアDNAが短縮しない。すなわち無限分裂寿命細胞である。これはテロメアDNAを延長するテロメラーゼという酵素が発現しているためである。生殖細胞にテロメラーゼが発現しているおかげで、子孫には一定の長いテロメアを伝えることが出来る。このテロメラーゼは受精卵から発生初期の組織でも発現しているが、ある時期から体細胞のテロメラーゼの発現は抑えられ、有限分裂寿命になる。成人ではテロメラーゼの発現はほとんどの体細胞で見られないが、骨髄や上皮細胞など再生系組織の幹細胞には弱い活性があり、テロメア短縮を遅延させている。



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整理しよう。

体の中で、無限増殖を繰り返し、余計なエネルギー消費を個体に強いる細胞がある。

これが、生殖細胞だ。

しかし、これが個体の予定外で行われる場合がある。

それが、癌細胞だ。


これが、結構、ミソ。

だいぶ大事な点です。

もう一度。


体の中で、無限増殖を繰り返し、余計なエネルギー消費を個体に強いる細胞がある。

これが、生殖細胞だ。

しかし、これが個体の予定外で行われる場合がある。

それが、癌細胞だ。







ここで、当然の疑問が浮かぶのだ。

疑問、つか、二択だ。





「我々はガイアの何なのだろうか?」




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僕が、『ニンゲンはガイアの精子と言えなくもない』、と考えている妄想は、主に三つある。

根拠、というほど論理的ではない。因果も示せていないから、妄想というのが正しい。



第一に、文明発生の必然性。

第二に、文明生物の兌換性。

第三に、ガイアという生命の目的と運命。


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文明発生の必然性。

文明が発生する、というのは、何もニンゲンに限ったことではないし、

ごくごく自然な進化の結果だと思う。

だから、文明は星を苦しめてなんかいない。



もし、地球と同じように、生命が発生した星があったとして、

おそらく、当然地球と同じように、下等な生物から始まるのだろう。

(パンスペルミア説などは、今は無視してください・・・)


で、何十億年あるいは何千億もしたら、やはりその星は文明を持っているのではないか。

生物そのものの、存在意義というような部分ではあるが、

簡単にすると、次のようなフローをたどるのではないかと思っている。


・生命の発生

・増殖

・多様性の必要

・性の発生

・増殖の効率化

・群体形成

・多細胞生物の出現

・群れの形成

・社会の形成

・カーストの形成

・社会余剰の発生

・文明の発展



だから、なんか、感覚的だけど、生き物って結局、文明を持つんじゃないか、って。

ただ増殖だけを目指していたとしても、必然的に、文明を持っていくものなんじゃないか。

となると、なんとなく、
「ニンゲンが文明を発展させてきたのが、そもそも悪だよね」的なことは

そもそも間違ってるんじゃない?当然の結論のようにも見える。

だから、ニンゲンが、ガイアの癌だとは思わない。
ニンゲンの文明が、ただガイアを苦しめるために生まれたとは思わない。

どちらかというと、自然な流れだったのだ。

自然な流れ、が病であるはずがなかろうに。



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これに絡めてではあるが、

文明の兌換性。

ちょっと難しい言葉を使ってみたかっただけだが、
つまり、地球が焼け野原になって、人間がみんな滅びても、
時間が経てば、表情を変えた地球上に、また文明が生まれているとおもうのだ。

『猿の惑星』 や 『クロノトリガー』のアザーラ などをイメージしてくれればいい。

人間が地球温暖化を促進させたり、核戦争で世界をめちゃくちゃにしたりするのは、
結局、隣人(ライオンやヒマワリ)は殺すけど、全滅させるかもしらんけど、

よくよく考えたら、

地球が割れるほどのことでは無いでしょう?

それこそガイアにとっては、

「ちょっとスキンヘッドにしてみた(笑)」

程度のことなのだはないだろうか。

だから僕は、ニンゲンがガイアを脅かす癌だとは思わない。


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ガイアという生命体の目的と運命。

これはすこし、予習が必要だ。


予習↓

生命が地球上に誕生したときは、性別というものは無かった。
無性生殖なのだ。

一個のアメーバが、分裂して、二個のアメーバになっていた。
そこに性は無く、当然遺伝子も同じなので、全てただのコピーだった。
つまりクローン。

クローンだから、ある意味不老不死。自分が永遠に増え続けるのだから。

しかし、遺伝子をミックスさせないと、病気や環境変動に対してその集団が弱くなってしまう。

(もし世界の男が全員キムタクだったら、ちょっとトレンドが変わったら子孫残せない)

そこで、他人と交わる、ということを覚えた。
これが性の発端。

(詳しくは、NHKスペシャル『生命』がとても分かりやすい)

そして、性を獲得するのと同時に、生命が獲得したもう一つの特徴がある。

それが、死、だ。

性交の目的が『自分とはちょっと違う個体を造ること』であるから、
生まれた子孫は自分ではない。

だから、このとき生命は、不老不死という光り輝く機能を、捨てたのだ。

(逆に言うと、性交ということが、不老不死なんかよりも、利益をもたらしたということか・・・、余談。)

予習終わり↑


だから、ガイア論支持者は、ガイアを生命体として考えるなら、決定的なことを忘れている。

ガイアは死ぬんだ。

少なくとも、死にうるのだ。
大きな目でみれば。

そもそも星には寿命がある。超新星爆発 スーパーノヴァです。
ほっといても死ぬんだ。

生命体だって同じだ。
活動しなくても、活動しても、寿命は寿命だ。
どうせ死ぬんだ。

だから、活動するのだろう?

それで寿命が縮もうが、活動するじゃないか。
それでめっちゃ疲れようが、セックスするじゃないか。


ガイアは死ぬんだ。

それも、当然の結果として。


ガイアの活動とは?ガイアの生きている意味とは?

ガイアが「生命体」である限り、
ガイアは増えようとしているはずだ。


そして、思い出してほしい。

ニンゲンは、癌じゃなかったら、何だ?

体の中で、
無限増殖が許され、
高エネルギー活動が許され、
寿命を縮めることさえ許されている 細胞があったではないか。





ニンゲンは、ガイアの精子なのかもしれない。


だからぼくは、ニンゲンがガイアを殺すことが悪だとは思わない。

ただしそれは、ニンゲンがガイアの生殖活動を担っているとするからだ。


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もうほとんど、終わりなのだけれど、終われませんww

もうたぶん、予想もできるだろうけれど、続きます。


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ガイアにとって、「生殖」とは何か?

ガイアはニンゲンに何をさせたいのか?

(完結編につづくのだ)





シーシュポスのススメ。




初めて
「オフ会」なるものに行った。

べんさんの勧めでもある。


オフ会のあとは、アップすにも行った。

べんさんの勧めでもある。



「吐きたい朝は、書きたい朝」
という文句の語呂が良すぎて、
それ以上崩したくないのだが、



吐きたくなくても、書きたい朝がある。

ん?それがある意味「吐きたい」のか?

愚痴、か。




うそつきました。
吐きたいです。



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今までやってこなかったことを急激にやりだして、
従来の感情と、現実の行動の間にめちゃくちゃ摩擦を感じて、

毎日のことながら、昨日の発言、行動を取り消せたらな、と思う。

でも、その取り返しのつかなさが、いとおしい、というのは前述の通り。
前述というのは、過去の日記の通り。




忘れる、忘れれる、という機能はとても秀逸だな、と昔からずっと思っているのだが、
最近はそう考えていない。











できることなら、 なにも忘れたくないのだ。










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何も忘れない男

というような題材で、何か書けるかもしれない





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過ぎし、1月29日は東京に行った。
日帰りで、濃密な上京であった。

滞在日数に関わらず、一回の帰郷によって得られる学びは、一定量なのかもしれない。
そしたら、毎回日帰りの方がいいじゃんか。



5年ぶりくらいの友人、その友人が働いている会社の筆記試験のために上京したのだ。

その友人とお茶しているときに、何度も名言が飛び出た。

一番しびれたのは、



「やりたかったら、やってる」



と 言われたことだ。



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「殺された未来へのイヨマンテ」と言い放つのは簡単だが、

「今、生かされている未来への供物」と考えてもいいのではないだろうか、

と言われたわけだ。








「どんな未来を殺してきたか、ということが頭を占めている」


その通り。
選択、進路決定、就職活動。
「実現できたかもしれない未来」を削っていくことに過ぎない、とすら考えていた。






「でもね」





就職活動という節目に出会って初めて、殺された未来と対面したというのが、ぼくの不幸だ、
とすら考えていた。




「でもね、

殺してきた未来と、ほとんど同数で、等量で、

どんな未来が今生きてるかも、考えられるんじゃないの?」






その通りだなぁ、と思った。
またしても、僕は馬鹿だった。






「未来を殺した選択をしたときは必ず、

何かしらの未来が生き残っていったはすでしょう。


今日何かが死んだら、葬式はするけど、

今日何かが生きていても、祭事は行われないのと一緒だよ。」






5年前はこの人に、説教すらした覚えがある。

月日が過ぎるのは早い。









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「やりたかったら、やってる」

というシビレ文句の真意は、



「やりたいけどやれなかったという事象なんて存在しない」

、という命題とほぼ同値。





「ほんとうはやりたかったんだけど、 できなかったんだ」 

という言葉は嘘だ。

ということ。










思い返してみた。



僕が今まで実際にやってきたことは、

いつだって「できたこと」「やれたこと」なのか?


思い返してほしい、
僕の友人が今まで、今も、やってきたことは、

僕から見るといつだって尊敬すべきチャレンジだった。


決して、安易に、

「やれたこと」

ではなかったはずだ。




それをやったのだ、彼らは。



すんなり、できたから、やったのではなくて、

彼らは、それを、やりたかったから、やったので。















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(今日はナゼか、ミスタイプから、いい表現が生まれるナァ・・・)



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この正月に帰省したときに実家の考え方に愛想を尽かしてからは、

「もー帰らんもんね」

と決めたので、実家には帰らずに上京した。

生まれ育った地ではあるが、実家に帰らん、と決めた今となってはもはやアウェイだった。






その、「もはや遠征」から帰るときの夜行バスの隣の席のあんちゃんは、

明らかにお前アメフトのひとやろ、と思うくらいのガタイで、

アメフトのひとにありがちな、スウェットで、

コンドームみたいなニット帽かぶって、

夜行バス慣れしてない感じで、。



コンドームみたいに先っぽが余ってるニット帽かぶってるひといたら、

80パーくらいの確率で、アメフトだと思っていいです。


そんなあんちゃんの隣で寝れるわけもなく、




昨日の早朝、その夜行バスは京都駅八条口に到着するも、

帰宅後、即刻、寝た。









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日曜の眠りから起こされて、何だと思ったら、親友からの電話だった。


「昨日東京いたんだ。タイミング悪いなぁ」

というようなことを僕は言ったが、そんなこと重要ではなかった。









「転職するんだ」




大学を卒業して3年目の彼は、3回目の転職を決めたのであった。




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いつしかの夜、僕はテキーラをロックで飲んでいたが、

隣にいた女の子は、何を飲んでいたか、今では思い出せない。

しかし、彼女が19歳だったということは覚えている。



「アナウンサーになりたい」

と言っていた。
僕は、「アナウンサーになりたい」と言った女性を他に2人知っていたが、

そのどちらとくらべても、その子の方が可愛かった。




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「家具職人になるのだ」


と聞いたときは流石にびっくりしたが。


一緒に受験勉強もした、

一緒に試合も出た。

俺にとっては最も尊敬すべき友人は、

京大にも入って、大学院にも行って、



家具職人はさすがに無いでしょうよ(笑)



と周囲にさんざ言われながらも、

大学院を辞めるのだという。




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やりたかったら、やってるのだ。



やりたいことをやって、ここまできたのだ。


今後も、


やりたいことは、結局やるんだなぁ。


要は、障壁を乗り越えるだけの「やりたい」かどうか、ということなのだろう。

とてもタイムリーな出会いを、ぼくはした。







5年ぶりの友人は、


「そういう人は、悩みすらしないのよね」




「あんたも、

知らず知らずのうちに、


違うか、

悩まず悩まずのうちに、



あんたの やりたいこと を選択してきたんじゃないの?」








俺が、
フットボールを通じて学んだこと、
宇城師や水野師から学んだこと、
そういうことを、ちゃんと生きているひとは、ちゃんと違うルートで手に入れているのだ。









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朝日を浴びてだんだんと色づいていく京都は、とても素敵だ。

うむ、素敵だ。







僕は、非常に個人的には、何も忘れたくない。
それが、僕が殺していった未来に対するイヨマンテ、



という結論でいいだろうか。




許してくれるだろうか。






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ひとの誕生日を覚えるのはまったく得意でないので、
ご無礼つかまつったのだが。


ゆうほ君、誕生日おめでとう。
いつも付き合ってくれてありがとう。


そうこうしてるうちに我々も25歳ですな。




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ああ、今日の1限テストだったな。

ん。







農薬科学、

まー、やりたくはないわな(笑)

2011年1月29日土曜日

ガイアレクイエムもしくはラプソディ (前編)




ガイア理論(ガイア論)

ガイア理論(ガイアりろん)とは、地球生物が相互に関係し合い環境を作り上げていることを、ある種の「巨大な生命体」と見なす仮説である。ガイア仮説ともいう。

生物学リン・マーギュリス気象学者アンドリュー・ワトソンなどが支持者に名を連ねる。』





ガイア論の中では、ガイアは一個の生命体であるとされる。宇宙という大海原に浮かぶひとつの生命体なのだ。



とてもロマンチックで、キャッチーな考え方だ。夢があって、愛にあふれている。いかにも人が好きそうな言い方だ。「宇宙船地球号」という考え方があったが、それより数段ロマンチック路線で勝っている。



「地球はそれで、一個の生命体なのだ」



なんでそんな突拍子もないことを言えるのか?



その根拠としては色々挙げられるのだろうが、特に挙げられるのは「ホメオスタシス」だろう。「ホメオスタシス」というのは十数年前の生物学会でにわかに流行りだした言葉で、日本語で言うならば「恒常性」となるのだが、これもまた学者が大好きな、良く分からない日本語チョイスだ。簡単に言えるなら、「内部環境自己調節機能」だろうか。




たとえば、ちょっとお水を飲み過ぎました、吸収されます。すると血が薄くなる、薄すぎるとまずいので、腎臓で水をおしっこに変えようとする生理作用が活発になって、おしっこいっぱい出た挙句、血の濃さがもとに戻ります。



たとえば、病原菌が入ってきて、変な物質たくさんだします。これを感知して、免疫細胞がたくさん生み出されて、戦って、病原菌を殺します。



みたいな感じだ。




 これがホメオスタシスだ。自分の中で調整できる、という能力はなかなか素晴らしいな、生物の生物たる理由のひとつである、と言う人もいる。



 地球という大きな球体が、空気の部分も含めて、おーーーーっきな生命体なのだ。




 たとえば、ちょっと隕石が落ちてきて、地球の大気の温度が1℃くらい上がっちゃったとしても、それによって生物全体の活性が上がって、たとえば植物の成長が早くなることで、大気のガスのバランスが変わって、熱が放散されやすくなって、長い目でみたら結局、温度は元通り。



 ひょんなことからライオンが大発生したら、そこらじゅうにライオンがいたら、怖い。そうすると、ライオンが餌にしている動物が激減する、激増したライオンによって。そうすると、巡りめぐって挙句、ライオンの数もちょうどよくなる。


 このように、ガイアという生命体は、体の中にある異常をきたせば、それを勝手に自律的に治癒する能力がある、という解釈なのだろう。


 比喩を許せばガイアは、ある程度の病気は自分で勝手に治せるんだぜ、ということだろう。



 絶妙なバランスを保って、複雑な繋がりを保って、ガイアは健康な状態を維持できるのだ。



 いや、違う。言い直そう。



 絶妙なバランスを保って、複雑な繋がりを保って、ガイアは健康な状態を維持できていたのだ。

 産業革命までは・・・。





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 今から数えてほんの700万年前に生まれた彼らは、最初は他の肉食動物に怯えて暮らすような臆病なサルだった。

 それでもあるとき火を使うことを覚え、辛うじてガイアの生態系の中に存在を許された。他の動植物がやるのと同じように、ガイアの絶妙なバランスを保つ一員として暮らしてきた。


 ガイアにとっては、事件はほんの昨日のことなのだろう。



 現在から数えてちょうど300年前、蒸気機関という仕組みが発見されてから、ガイアの一部であるニンゲンはガイアの貴重な蓄えに目をつけた。


 ガイアは長い年月をかけてその蓄えを生み出し、腹の底に抱え込んでいた。彼らはそれに目をつけたのだ。


 まずは石炭から始まった。次に石油。


 ガイアの体の一部分であったはずのニンゲンは、急速にガイアの血肉を使い始めた。


 それを皮切りに、ニンゲンの増殖力は留まることを知らない。ガイアの肉を喰らい、血をすすり、ガイアの他の組織である動物、植物を駆逐しだした。


 彼らニンゲンは、ほんの700万年前に生まれた比較的新しい細胞だった。

 

それが今や、ガイアの蓄えを喰い尽くさんばかりの勢いで増殖を続けている。ガイアにほんの少量存在するだけの貴重な金属も喰い尽くそうとしている。


 ガイアは今、病気だと頻繁に言われる。ニンゲンという反乱分子を腹に抱え、体のあらゆる部分が破壊され続けている。


 発熱すらしている。ガイアの体温は上昇し続けている。


ガイアの自己調節機能、ホメオスタシスはどこにいったのだろうか?


ガイアの免疫は、彼らを駆逐してはくれないのだろうか?


誰か、彼らを止めてくれないのだろうか?


このままではガイアが死んでしまう。








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 さて、

地球上に生きている生き物の体というのは、小さな細胞からできている。一つひとつの細胞が生きていて、それらが寄り添って一個の生命体を作り上げている。


 例えば一人の人間はだいたい60~100兆個の細胞から構成されているらしい。


 一つひとつの細胞はお互いに協力したり、化学物質を使ってコミュニケーションをとったりして、絶妙なバランスのもとで、一個の生命体の生命活動を支えている。


 一つひとつが欠かせない役割を持っていて、全体を構成しているわけだ。


 例えば、血を作る造血細胞というのがあるのだが、彼が勝手に馬鹿みたいにガンガン増殖を始めちゃうと、血が固まりやすくなって、血管が詰まったりして大変になるから、いい塩梅で増殖するように調整されている。


 例えば、病気になったときに作られる免疫細胞が、病気との戦争が終わった後も居残り続けると、逆に自分の細胞を攻撃しちゃうから、戦いが終われば勝手に死ぬようにプログラムされている。


 増えすぎず、減りすぎず。生き続けず、死に過ぎず。これを保つために、一つひとつの細胞には寿命があったり、死ぬことが運命付けられていたりする。


 細胞の増殖には限度数が設定されていて、もうこれ以上増えちゃだめです、ということを決める遺伝子がある。


 しかし、長く生きれば、遺伝子のコピーにもエラーが起きる。


 エラーが起きた末、増殖を自分で抑えられなくなった、無尽蔵に増殖することが許されてしまった細胞が生まれることがある。



 これが、癌だ。



悪性腫瘍(あくせいしゅよう、: malignant tumor)は、他の組織との境界に侵入したり(浸潤)、あるいは転移し、身体の各所で増大することで生命を脅かす腫瘍である。

一般にガンがん: cancer: Krebs)、悪性新生物(あくせいしんせいぶつ、: malignant neoplasm)とも呼ばれる。

「がん」という語はほぼ「悪性腫瘍」と同義として一般的に用いられ、本稿もそれに倣い「悪性腫瘍」と「がん」とを明確に区別する必要が無い箇所は、同一語として用いている。



身体を構成している数十兆の細胞は、分裂増殖と、「プログラムされた細胞死」を繰り返している。正常な状態では、細胞の成長と分裂は、身体が新しい細胞を必要とするときのみ引き起こされるよう制御されている。すなわち細胞が老化・欠損して死滅する時に新しい細胞が生じて置き換わる。ところが特定の遺伝子に突然変異が生じると、このプロセスの秩序を乱してしまうようになる。すなわち、身体が必要としていない場合でも細胞分裂を起こして増殖し、逆に死滅すべき細胞が死滅しなくなる。





 無尽蔵に増殖できちゃうことを許された細胞。


 癌細胞においては、前述の



「細胞の増殖の限度数を設定する遺伝子」



が機能しなくなっている。



 ある種の生物学者や医学者は、ここに不老不死のヒントがあると考え、この遺伝子を研究している。


 だとしても、他の細胞と協調の取れなくなった細胞、癌。


 自らの機能を忘れ、ただ増殖し続ける細胞。


 挙句、自分の場所を飛び出し転移を繰り返す。


 止まることも、戻ることも忘れた、悲しい細胞、癌。







(後編につづくのだ)